走れダイエットランナー!

はからずも52にして人生を再スタートすることになりました。健康を取り戻し、また走り始めたい!

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水都大阪ウルトラマラソン外伝3・矢、尽き。刀、折れ。それでも、ゴールを目指したランナーたちの物語。3-3 名も知らぬ、二人の女性ランナーの場合

▼3-1はこちら。

dietrunner.hatenablog.com

 

▼3-2はこちら。

dietrunner.hatenablog.com

 

 

名も知らぬ、黄色いTシャツの二人と、背の高いスイーパーさんの場合

  

僕が出していたエイドは、オフィシャルエイドの豊里エイドのすぐ横にあった。スタート地点から言うと、25kmくらいの地点だ。

 

朝のうちはまだ涼しく、エイド用に準備したオレンジはまだ出していなかった。9時を回り、日差しがきつくなってきたので、そろそろタッパーからオレンジを取り出し、

 

「オレンジあるよ!オレンジ食べて行ってー!」

 

と声をかけ始めた。

 

スタートしてまだ2時間ちょっと、まだまだ元気なランナーたちは、オレンジを摂らなかった。

 

最初にオレンジを口にしてくれたのは、3名の美女たち。同じウェアに身を包んでいた。

 

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蛍光黄色の、2016年名古屋ウィメンズマラソンのフィニッシャーズTシャツ。

  

そして下半身に、チュールで作った、黄色いスカート状のものを巻いている。

 

そして頭には、ピカチュウの耳だろうか、黄色いツノみたいなのがついたカチューシャをはめている。

 

そんな美女軍団が、楽しそうに笑いながら走っていた。

  

僕が彼女たちに声をかけると、彼女たちは立ち止まり、オレンジを食べてくれた。

 

「めっちゃ美味しい!!」

 

「冷たいのが嬉しい〜〜!!」

 

彼女たちはハイテンションで喜んでくれた。

 

 

やがて、遅れていた一人が合流。

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後から来た一人は、他のランナーより少し長く僕たちのエイドにいた。

 

「あと一人、来ますんで!!」

 

と言い残し、彼女も去って行った。

 

その約2分後。まったく同じウェアの若い女性がやって来た。

 

「おんなじ格好した人らがさっきこのオレンジ食べてくれたよ!!」

 

と僕は言った。すると彼女も立ち止まり、オレンジを口に含み、

 

「美味しいぃ〜〜!!」

 

と言ってくれた。この大会を心から楽しんでいる様子であった。

 

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ただ、一つだけ気になることがあった。

 

最後の女性が通った、ほんの1分後くらいに、スイーパーを従えた最終ランナーが通った。

 

スイーパーとは、簡単に言うと、制限時間内で最後尾を走るランナーのことだ。

 

つまり、黄色軍団の、特に最後の彼女は、関門ギリギリのペースで走っているのだった。

 

とても目立つ服装、とても陽気な女性たちだったので印象深かった。

  

さて、スイーパーが通り過ぎたということは、折り返して来るまではランナーはしばらく通らない。

 

僕は、ランナーを追いかけて、各エイドの写真を撮るべく、自転車にまたがった。

 

豊里エイド、鳥飼エイド、新橋エイド、枚方エイド、と写真を撮った。

  

実はこの大会、100kmの部は関門が4つあるが、70kmの部は関門は1つしかない。

 

34.6km、枚方エイドを4時間半で超えればいいのだ。

 

枚方エイドにたどり着いたランナーたちは、さらにそこから少しだけ直進する。そして1km弱の距離にある折り返し地点で、チェックポイントのスタンプをもらうのだ。

 

僕はこの折り返し地点まで自転車で来て、スタンプをもらっているランナーさんを写真を収めた。

 

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そして、ランナーさん同様、折り返して、自分のエイドに戻ろうと思った。

 

折り返し地点へと向かう、たくさんのランナーさんたちとすれ違う。僕はゆっくり自転車をこぎ、

 

「ナイスラン!もうすぐそこ、折り返しやで!!」

 

と声をかけていた。

 

すると…

 

あの、黄色軍団の、最後の一人の女性が走っていた。相変わらず、笑顔を浮かべ、ゆっくりと走っている。

 

そしてその横には、長身のスイーパーくんがいた。

 

その二人とすれ違うとき、彼女がスイーパーくんに、笑顔で話しかけている内容が耳に入った。

 

「でも、アタシ、関門を越えたわけやから。もう最後まで走ってもいいんですよね?」

 

と彼女は聞いていた。

 

自転車ですれ違っただけなので、スイーパーくんの答えまでは聞き取れなかった。

 

「ああ、なるほどなあ…」

 

と、僕は思った。

 

70kmのランナーにとって、唯一の関門である枚方エイドの関門を過ぎれば、もう関門はない。

 

もちろん、制限時間はある。大阪城のゴールに、11時間以内、つまり17:30までに到着しないといけない。

 

ただし、17:30を超えても、走路はまだ生きている。100kmランナーの制限時間は14時間、20:30までだ。70kmの制限時間が終わっても、あと3時間は、100kmランナーのためにゴールは開いている。

 

関門を越えた以上、走り続けるのは自由だ。ただ、17時30分までにゴールできなければ、記録上はDNF*1になる。

 

彼女は今、最初にして最後の関門を越えたわけだ。あとは残り時間でなんとかゴールしてほしい。

 

そう思いながら僕は自転車を走らせた。

 

その後再び、自分のエイドでランナーに声をかけ、応援を繰り返した。

 

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15時になって、毛馬エイドに自転車で向かった。その道の途中で、苦しんでいる友人と出会い、彼女の伴走をすることにした。

 

dietrunner.hatenablog.com

 

友人の横を自転車で伴走しながら、「70kmのスイーパーはどこにいるんだろう…」と不思議に思っていた。友人自身が、もうほとんど間に合うか間に合わないかの境目にいるはずなのに、彼女のそばにスイーパーはいなかった。

 

毛馬エイドで折り返し、かなり経ってからスイーパーが現れた。彼は…

 

あの、黄色軍団の女性と走っていた。

 

しかも黄色軍団の二人と。

 

おそらく、黄色軍団の最後から2番目に走っていた女性と、一番最後の女性が合体したのだろう。

 

この二人が、70kmの最後尾ランナーなのだ。彼女たちがリタイアしない限り、スイーパーくんは彼女たちと走らないといけないのだろう。

 

僕が伴走している友人よりも、はるか後ろを走っている。絶対に、ゴールには間に合うはずはない。 

 

スイーパーくんは先ほど同様、とても背が高い、痩せた青年だった。

 

長身スイーパーと、蛍光黄色を着た二人の美女は、とても目立つ3人組だった。

 

その3人組は、とてもゆっくりとしたペースで、ゴールへと向かっていた。間に合うはずのないゴールへ。

 

17時頃、伴走していた友人と別れ、僕は駐車場に停めたクルマでお方さまと合流した。そしてクルマに自転車を積むと、ゴール地点へと向かった。

 

大阪城の駐車場にクルマを入れ、ゴール地点へ急ぐ。

 

時間は18時。70kmの制限時間、17:30はとっくに過ぎていた。

 

そこで僕は、岩田栄美さんやおかべあいこさんと再会する。ギリギリでゴールできなかった彼女たちの話を聞いた。

 

やがて、友人たちは帰って行った。応援だけで参加している僕たち夫婦は、立ち去り難く、その場に残って、ゴールしてくる100kmランナーに声をかけ続けた。

 

大阪城に入ってきたランナーは、すぐに現れるゴールゲートを横目で見ながら直進し、天守閣の下で最後のチェックスタンプをもらわなければならない。

 

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ゴール横を直進するランナーに、

 

「おかえり!おかえり!あともう少し、天守閣まで!!」

 

と叫び、天守閣から戻ってきたランナーには、

 

「よく頑張った!!100km走った!!すごいよ!!」

 

と叫ぶ。

 

100kmを走破した誇り。きょう1日、頑張り続けた自分自身への誇りで、すべてのランナーの顔は輝いていた。

 

大の大人が、号泣しながら走りこんでくるランナーも、何人もいた。

 

素晴らしい光景だ。

 

19時近くになってきた。日はすっかり落ちて暗くなり、あたりは急速に寒くなってきた。

 

最後までいたかったが、薄着のわれわれは、これ以上ここにいたら風邪をひくだろう。

 

そろそろ帰ろうか。そう思った時だった。

 

向こうから、蛍光黄色のTシャツが2名、やってきた。スイーパーのビブスをつけた、長身ランナーもいる。

 

まさか…。

 

蛍光黄色のTシャツは、2016年の名古屋ウィメンズ。見間違うはずはない、あの二人だ!そして長身のスイーパーも、ずっと一緒に走っていたんだ。

 

そのゼッケンはピンク色。70kmランナーだ。

 

もう1時間30分以上前に、制限時間は過ぎている、70kmランナーだ。

 

彼女たちはまだ走っていたんだ。

 

100kmランナーはまだ時間内なので、走路は生きている。でも70kmランナーは、もう誰もいない。

 

ゴール地点に私物があるのだ、戻ってこないといけないのだ。でも、どこかで電車にでも乗ったほうが、はるかに早く着くのに、彼女たちは走り続けたのだ。

 

チャラチャラしたチュールのスカートを履いた、軽いノリのランナーかな、と思っていたが…

 

スタートしてから実に12時間半以上、走り続けたのだ。

 

蛍光黄色の二人は、笑顔でやってきた。ゴールゲートまでやってきた。

 

お疲れさま、最後まで走ったんだ、えらいね!!

 

 ゴールゲートの横に私物置き場がある。当然、彼女たちはその足で私物置き場に向かうと思ったが…

 

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なんと!!彼女たちはそこには向かわず、直進したのだ!!

 

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それはつまり、70kmを最後まで走りきるつもりなのだ!!

 

ここから実は、あと1km近くあるのだ。しかも、この先には雁木坂がある。かなりの急坂で、ランナー泣かせの坂だ。最後の最後にこんな意地悪をする、関西弁で言うところの「いけず」なコースだ。

 

できるなら疲れた足で登りたくはないあの坂も、登ると言うのか。

 

前を走り去る彼女たちに、僕は聞いた。

 

「70kmやろ?『行く』の?!『行く』の?!最後まで?!」

 

彼女たちは二人とも、笑顔で僕に答えた。

 

「『行く』に決まってるやん!!」

 

彼女たちはそう言って、暗闇に続く天守閣へと消えて行った。

 

ただ一人、長身のスイーパーくんだけが、ゴール前で離脱し、本部席に走って行った。

 

彼女たちは、かなり経ってから戻ってきた。長身のスイーパーくんが、彼女たちに駆け寄った。

 

「今、聞いてきました、ゴールゲート、くぐってもらっても良い、とのことです!」

 

と彼は彼女たちに告げた。

 

そうか、スイーパーくんが離脱したのは、とうに制限時間を超えた70kmランナーの彼女たちが、ゴールゲートをくぐって良いかどうかを本部に確認に行っていたんだ。

 

「ホンマに?!やったぁ〜〜!!」

 

と一人が言った。

 

「〇〇君も!!一緒に!!」

 

もう一人が、長身のスイーパーくんの手を取った。たぶん、彼も、枚方エイドから、ずっと付き合ってきたのだ。8時間以上、彼女たちと行動を共にしていたことになる。もう運命共同体と言って差し支えあるまい。

 

2人の、最も遅い70kmランナーと、1人の長身スイーパーは、3人揃って、ゴールゲートに吸い込まれて行った。

 

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僕たち夫婦の、長い応援の1日は、彼女たちのゴールを見届けて終わった。

 

素晴らしい1日、素晴らしい大会、素晴らしいランナーたち。

 

来年は第10回大会になるそうだ。

 

来年は、ランナーで参加できるかな。  

 

ランナーの皆さん、主催者の皆さん、お疲れさまでした。

 

  

*1:Did Not Finish  リタイアのこと。